段取替

目的

段取替(切替)の目的は、「小ロット生産による仕掛品在庫の縮減」にあります。

ある指導先で、段取替に8時間かかる設備がありました。つまり1日がかりで段取替して、その日は生産できないのです。こうなると”できるだけまとめてつくりだめをしておこう”と考えるのも無理はありません。こうして、何カ月分かの仕掛品在庫が眠ってしまい、キャッシュフローが悪くなります。

もし段取替が3分でできるとしたら、今必要な1個だけつくってすぐ次工程に渡す、というつくり方ができます。つまり仕掛品在庫はゼロです。これが理想の姿で、それに近づけていくために、極限まで段取替時間を短縮していく必要があるのです。

対象

段取替改善の対象に向いているのは、次のような設備です。

ネック設備:能力が小さくて、常にそこで工程の流れがつまる設備。並行して、設備能力増強も図っていかねばなりません。

 

段取替時間の長い設備:まずは3時間以上かかる設備。次に2時間、1時間と次第に範囲を広げていきます。

 

段取替ができる人が少ない設備:まず一人しかできない設備から始めます。

手順

対象設備が決まったら、段取替改善の手順は、以下のように進めます。。

切替対象製品の選定:一番頻度・回数の多い製品の切り替えで、しかも時間がかかるものほと対象に適しています。厄介で大変なものほど良いのです。A製品からB製品に切り替えると設定し、効果確認の時もそれと同じにして比較します。

 

作業工程分析:設定した切替作業を、開始と終了を定義して(効果測定時にぶれないように)、Cさんについて、作業ごとの時間測定を行います。この時感じた疑問点・問題点は測定用紙にメモしておきます。

 

目標設定:現状(改善前)の時間に対して、まず半年以内に半減を目標設定します。可能なら毎月実績時間をプロットして、グラフ化します。

以上が準備、以下は改善です。

外段取化:設備稼動中にできる項目を抽出し、それを徹底的に事前準備に切り替えます(外段取化)。そのためには段取用台車を作り、必要なものすべてをこれに乗せて、設備近くに定置しておきます。段取替が始まったら、ウエス一つ取りに行ってはいけません。

 

複数並行作業化:Cさん1人でやっている段取替を、2人以上で同時並行して行います。これを提案すると大抵、「工数は変わらないのでは」(その通りです)「一緒にやる人がいない」(?)という意見が出ます(やらない言い訳!)。まずこの壁を突破する必要があります。段取替時間短縮の重要さが、肚に落ちていないのです。社長・工場長が改善リーダーになるのが一番です。

 

複数ですから、安全第一に、各人が手空きにならないように役割分担し、それを作業標準書に表します。

 

治工具改善:適切な治具や工具を工夫することにより、作業を楽に早くできることがあります。

以上の改善で、おそらく目標は達成できます。しかしそれ以上に短くするとなると、構造改善、追加設備などの追加投資を伴います。これを徹底的に追求したのがトヨタ自動車です。半世紀も前の1970年当時4時間かかっていた1,000トンプレスの段取替時間を、1年後には3分に短縮しました。シングル化(10分未満)の始まりです。この状況を下図にまとめました。

トヨタのプレス段取替改善 マサキ経営 現場改善 段取替

実績

現場改善のページの段取替でご紹介した、工作機械の段取替時間短縮の実績を以下に示します。

工作機械の段取替時間短縮 マサキ経営 見える化 現場改善 段取替

この改善の最中のエピソードを、拙著にかきましたので、以下にご紹介します(『会社のムダを「見える化」する技術』中経出版P.104)。

ワンポイント ビデオ撮影の効果

3時間もかかる大型機械の段取り替え作業の一部を、作業者の方と一緒にビデオ映像で見ました。彼は自分の作業する姿を見て、ときどき「ああ」とため息をついていました。工具や治具を何度も取りに行くムダな動作が映っていたのです。その成果もあってか、1カ月後にはなんと、所要時間は半分の87分になっていました。

段取替改善には、ビデオ映像を作業者当人と一緒に見て、大いに活用したいものですね。