設備保全

定義

設備保全PM)とは、TPM(Total Productive Maintenance) を簡略化した、設備を適切に保全(メンテナンス)・管理する活動です。

目的

設備保全の目的は、次の3つです。

可動率100%:使いたいとき必ず、設備が適切にすぐ動く状態を保つことです。稼動と区別して、可動(べきどう)と呼ぶことがあります。

生産のあるべき姿は、仕掛品在庫を持たない”待ったなし”生産ですから、設備がすぐ動く信頼・前提の上に立たないと、実現できません。

設備は毎日使うとは限らず、数週間、時には数カ月使わないことがありますが、その時にも、使いたいときに100%動く状態を維持するのです。

ライフサイクルコストの節減:設備の購入から廃棄までのライフサイクルを最小に維持します。

つまり、❶初期費用 + ❷ランニングコスト + ❸廃棄費用を最小にします。
❶初期費用で大切なのは、見かけの安さで「安物買いの銭失い」にならないようにすることです。❷❸を加えたトータルコストで判断することが大切です。

❷ランニングコストの決め手となるのは、メンテナス・分解修理・型交換しやすい構造です。例えば、ボルトナット構造は”親の仇”ですので、最初からそれに代わるワンタッチ構造を導入すべきです。当然❶初期費用はアップしますが、❷ランニングコストを顕著に減少させます。

このような合理的な判断で設備を購入している組織は、残念ながらめったにありません。調達方法を改善し、ルール化しましょう。

寿命を延ばす:適切に保全することにより、設備の寿命が延びて、減価償却負担のない(コストのかからない)設備になります。

手順

モデル設備選定:以下の基準で、モデル設備を選びます。

❶重要設備:稼動率が高く、稼ぎの主力になっている重要な設備。

 

❷他に代替機がない唯一の設備:これが止まったらおしまいという設備。

 

❸動かせる人が一人しかいない設備:その人が辞めたらおしまいという設備。

 

❹高価な設備:何かあったら、経済的損失が大きいという設備。

 

❺入手しがたい設備:廃業したメーカーの設備や外国製の設備。

目標の設定:以下の数式で現状の稼動率を計算し、半年後に20~30%アップの目標値を設定します。

設備稼動率(%)=[負荷時間ー停止時間] ÷ 負荷時間 ✖ 良品率

負荷時間とは、稼動が期待されている正味時間です。例えば、休憩時間は稼動を止めるなら8時間、止めないなら9時間というように。常時連続生産で止めないならば(製鉄の高炉のように)24時間です。

また、夜間連続無人運転するプレスなどは、セットしたコイルが打ち終わるまでが稼動が期待されている正味時間です。

もし1日フル生産せず、4時間だけ稼動させるなら、負荷時間は4時間です。

停止時間とは、製品を生み出していない時間(空運転も含め)のことで、以下のように多種多様です。これらを細かく拾い上げ、毎日集計します。

❶始業後の清掃、調整・立上時間(ヒートアップなど)

 

❷段取替時間

 

❸設備保全時間(毎日と定期)

 

❹故障・不調・不良で止める時間、それを調整・修理する時間(チョコ停を含む)

 

❺手待時間(原材料や前工程からの投入品が間に合わずに待つ時間)

 

❻オペレーターの都合で止める時間(個人都合、休憩、食事など)

 

❼会社の都合で止める時間(教育研修、改善活動、打ち合わせ、健康診断など)

 

❽終業前の清掃、片付け

対策:❶設備を停止させずかつ❷不良が出なければ、稼動率は100%になります。

❶設備を停止させない対策は、上記停止時間に対して、個別に対策していきます。

❷不良対策については、自設備起因以外に次のような幅広い原因がありますので、これに対して対策します。

・原材料の不良(メーカー、物流業者、保管、運搬)

 

・外注業者の不良(生産、保管、運搬)

 

・受入体制の不良(検査)

 

・社内物流体制の不良(保管、運搬)

 

・前工程の不良

 

・自工程の投入・作業ミス

日常保全取扱説明書法的規制をもとに、始業時に保全すべき項目を保全表の形にまとめます。安全の確保が最大の目的です。動力プレスなどでは法的に義務付けられています。

非常停止ボタンなどの安全装置の作動確認は、適切な周期を決め(始業ごとに行うのがベスト)、保全表に記入します。

定期保全取扱説明書と、設備台帳を基に、最適なタイミングで、日常できない保全項目を保全表の形にまとめます。

部品の寿命を考え部品交換をする、オイルタンクを清掃しオイルを取り換えるなど、不具合を予防し、設備寿命を長くすることに重点があります。

外部保全:社内ではできない保全を、メーカーや外注業者に委託する保全を決めます。

立会保全:定期的あるいは抜き打ちで、管理者が保全の実施状況を立ち会い観察します。現場に任せきりにせず、それを管理者の仕事にします。その時のポイントは以下の通りです。

❶保全表の手順通り行われているか?

 

❷保全表の時間通り行われているか?

 

❸食い違いがある時は、それを保全表に記入する。

 

❹作業後、保全表に合わせるように作業者に注意するのか、それともそれを認め保全表を改定するのかを見極める。

 

❺また、過剰なもの、意味のないものをやめ、抜けているものを追加する。

⑧公開PM:設定目標を達成したことを確認したら、工場長以下幹部・関係者が集まって、日常保全を中心とした公開PMを行うことをおすすめします。