改善事例⑱ 改善をつみ上げるか、不正に手を染めるか

14年間の指導で見違えた老舗企業
5S 見える化 コンサルティング

現場改善指導期間のこれまでの最長記録は14年間です。顧客は創業100年を超えた老舗企業です。5S、見える化、現場改善と3拍子揃って見違えるように良くなりました。

社員の意識も改善体質に変わっていきました。多くの改善リーダーたちは、活動に意欲的に取り組んでいただけました。そのなかでも最優秀組の一人、品質管理とプレス部門を兼務する部門長Mさんは、毎回のように優秀作品を見せてくれるのでした。

あげたら切りがないほどですが、その中でもささやかと思われるかもしれませんが、だれでもできるさりげない改善の中にすごさがありました。

ファイル検索時間の短縮
5S 見える化 コンサルティング

ファイルの検索時間は短いほどよいのですが、ファイル数が多いと、捜すのに手間取り、時間がかかってしまいます。

「プレス工程検査成績表」は、各名番別にこれまで46個のファイルがありました。ですから担当者は、ある名番の検査をするたびに、その46個のファイルのなかから特定の1個のファイルを捜すわけです。

これでは時間がムダだと思ったMさんは、それを2個のファイルに統合してしまいました。

検査項目は同じで、寸法・公差だけがちがう様式の検査を、2種類にエクセルで統合したのです。

したがって改善後はまず、2種類の検査のうちどちらかを選び、該当する寸法・公差を選んで検査すれば良くなったのです。

まさにこれは「コロンブスの卵」ですね。結果を見れば「なんだそんなこと、当り前じゃないか」と誰でも思うようなことです。

しかし偉大なのは何事も、だれもやらないよいことを、初めてやった人です。

改善をしない人の言い訳
5S 見える化 コンサルティング

なぜ多くの人たちは改善をやらなかったのでしょうか? それは次のように思って仕事をしていたからだと思います。

①決められたことを決められたとおりにやることが自分の仕事だ。

 

②仕事をよりよくなるように改善しろなんて、だれにも言われていない。

 

③改善することは良いことだとは思うけど、それは誰か他の人がやってくれるだろう。

 

④毎日仕事に追われてこなすのに精一杯で、改善なんか考えているヒマがない。

 

⑤何かを変えるのって、ややこしく面倒なだけだ。今のままでよい。

検査不正はなぜ防げないのか?
5S 見える化 コンサルティング

しかし不思議なことがあります。上に述べたような人たちが、会社が決めたルール・標準に徹底的に忠実で、てこでも曲げないかというと、そうでもない”融通無碍”なところがあるから矛盾しているのです。

検査記録の改ざん問題がまさにそうです。ちゃんとルール・基準はあるのですが、それがややこしかったり、時間がかかったりすると、ちゃっかり裏マニュアルをつくったり、それすらも守らないようなことまでしでかす人が出てくるのです。

ISO審査・内部監査で見ぬけないのか?

ISO9001審査員になったとき、本来ならば出荷停止になる不良品に対して、たとえ工場長や社長が出荷指示をしても、頑としてはねつける品質管理マネジメントが機能しているかをチェックするように指導されました。

もしそのような事実が客観的な証拠と共に証明できたら、それは「メジャーな不適合」として、審査不合格あるいは認証取り消しになると。

審査以前にISOのシクミとしては、内部監査員が不正があったら指摘できる権限を持たされているとは思うのですが、そっちの方はどうなっているのでしょうか?形骸化、マンネリ化、儀式化していないでしょうね?

検査の改ざんや不良品の出荷を許可した一連の不正問題はまだ落ち着いていないようです。曙ブレーキの検査記録改ざん問題が最近新聞を賑わせていました。まだこりずにやっていたのかと思いました。

ではISO審査員はこれらの不正を見ぬいて、事前に(世間で問題になる前に)認証を取り消したかというと、そんな事例はなかったように思います。これらの大企業はことごとくISO9001の認証を取得していると思いますが、これらの大企業は検査機関にとって顧客でもあるのです。忖度したか、あるいは見ぬけなかったか?

信頼を取り戻すためにやるべきこと
5S 見える化 コンサルティング

検査表のデータを統合して検索しやすくした優秀なMさんの話から、思わぬ方向に話が飛んで拡大してしまいました。結論は次の2つの課題を、いかに両立させるかという所に落ちつきます。

①改善のネタはいくらでも転がっているので、それを拾い上げてコツコツ改善する「改善派」になってほしい。

 

②楽な、手をぬくやり方が不正領域に行くようであれば、断固Noと言ってほしい。