改善事例⑰  書類のよどみない流れをつくろう Documents life cycle

書類のよどみない美しい流れ5S 見える化 コンサルティング

事務所での書類の「よどみない流れ」をつくるやり方をご紹介します。主として経理のような会計年度で動き、定型的で発生書類の量も一定している部署に適しています。

その流れを以下の図で一覧で示しました。細かい点も多くなり恐縮ですが、一つ一つ追っていけば、その合理的で美しい流れがわかり、採用したくなるのではないでしょうか? とくに経理部門の方たちは。

書類のよどみない流れをつくろう マサキ経営 正木英昭 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

3年保管・4年保存の流れ5S 見える化 コンサルティング

ここでは、事務所に3年間「保管」し、その後書庫で4年間「保存」するという前提です。実施日は、2021年4月を想定しています(会計年度は4月1日から3月31日として)。なお「保管」とは、「関係者のだれもが、30秒以内で検索できる状態に書類を定置する」ということです。

上の図の右半分が「事務所」、左半分が「書庫と運搬」を示しています。書類の流れの順にご説明していきます。

廃棄:書庫の保存期限切れ保存箱(2013年度)を廃棄します。
具体的には4年間の保存を終了した保存箱を書庫の棚からぬいて、それを廃棄するためのトラックに積みこむ作業です。

 

箱詰め:事務所で保管期限切れの書類(2017年度)を保存箱に収納します。
3段のキャビネットの一番下の段にある書類をぬきます。
このとき、どの保存箱にどの書類を入れたかがわかるように、保存箱にNo.を記入し、その中身を示す「書類保存表」を作成し、コピーをとって、1枚を手元に残し、もう1枚を保存箱にはります。

書類保存表 マサキ経営 正木英昭 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

書庫収納:保存箱(書類保存表付き)を事務所から書庫に移します。このとき「①廃棄」で空いたスペースに収納します。ただしそこに「2017年度保存書類」の表示を掲げます。
それまでは「2013年度保存書類」と掲げてあった表示を、とりかえるということです。

 

下段へ移動:それまでキャビネットの2段目に入っていた書類(2018年度)をぬいて、一番下の空になった段に移します。
続いて、1段目に入っていた書類(2019年度)をぬいて、空になった2段目に移します。

 

新年度保管開始:新年度に作成した書類は、空になった一番上の段に入れていきます。

年度がかわったら、また同じ①から⑤までをくり返します。

なぜ当年度の書類を一番上に、昨年度を2段目に、一昨年度をいちばん下におくかというと、取り扱いの容易な順に、良い場所を割り当てるという発想です。

さらなる留意点5S 見える化 コンサルティング

どうですか、美しい流れだとは思いませんか? さらなる留意点を以下にまとめました。

保管期間:このケースでは事務所で3年保管する場合を示しました。3年前までさかのぼって、どんな書類でも30秒以内で検索できます。

しかし2年保管でよいという場合は2箇所に分ければよいのです。この場合は3年前までさかのぼって書類を見たくなるケースはまずないという場合です。それならその分だけ、事務所のスペース負担は楽になります。

得失をよく考えて判断してください。

データ保存:紙のまま保存箱に入れずに、スキャナーで読んで電子データ化してしまうという選択肢もあります。人手をかけずに、自動的に読みとってくれるスキャナーがあれば可能です。

この場合は、書庫や出し入れする管理コストが大幅に削減されますので、データ化の検討は必要です。

保存の外注化:書庫を自前でもたずに、外注に委託する選択肢もあります。この場合は契約によっては、検索・配達・収納・廃棄を請け負ってくれますので便利です。

私がいた日本鋼管本社(丸の内なので地価が高く、書庫にさくスペース余裕はない)でも、埼玉県にある外注倉庫に書類保存を委託していました。そのかわり依頼した書類が届くのは翌日でしたが。

溶解処理:通常書類の廃棄とは、「産業廃棄物」として、焼却処分することを意味します。CO₂を排出するので環境保護の上では好ましくありません。

できるだけ、製紙工場にもちこんで「溶解処理」することをお勧めします。こうすれば書類は紙資源としてレサイクルされ、CO₂を出すこともありません。

保存箱は環境にやさしく溶解処理 マサキ経営 正木英昭 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

産廃処理よりはコストがかかりますが、環境保護に熱心な企業としてのアピールはできます。5Sを指導したある中小企業では、すでに運送業者に委託して書類を溶解処理していたので感心した覚えがあります。

秘密保持を心配する必要はありません。業者に引き渡した段階で保存箱は封印され、そのまま製紙工場の溶解ラインに直行しますから。

シュレッダー処理の廃止:秘密保持のため、シュレッダー処理をする企業は少なくありません。私から言わせれば、下記の「理由」のように理屈に合いません。

シュレッダー処理は止めたい マサキ経営 正木英昭 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

溶解処理(プレス処理もある)という「別の方法」があるわけですから、シュレッダー処理はもう過去のものにしたいものです(シュレッダーメーカーには申し訳ありません。ちがう機械を開発してください)。