太平洋戦争五つの誤算③ 今も合理的判断ができなくなっている

①拙速な戦争準備での開戦(続き)

体力勝負に負けるべくして負けた

国と国との戦いは、最終的には国力・体力の勝負となります。いまも続いているウクナイナ戦争は、体力的にはウクライナにとうてい勝ち目はないのですが、西側諸国の支援を得て、「西側代理としてのウクライナ」とロシアの戦いになっているので、1年以上も続けられるのです。

太平洋戦争では、日本を支援する国はなかったので、資源を他国から確保(略奪)するとの前提で孤軍奮闘しました。しかしその前提もあっけなく破綻して、国民は塗炭の苦しみに喘ぎました。

最初いきなり張り手(真珠湾攻撃)で一瞬相手をたじろがせたものの、その後は持ち前の体力に物を言わせた横綱(米軍)に、電車道で寄り倒され瀕死の重傷を負った三段目のような戦争でした。

属国でもいいという自民党支持者たち

無条件降伏後の日本は、今日まで続く”アメリカの属国扱いの国”になっています。自民党を支持するということは、”属国でもいい”ということになります。”地位協定も沖縄もそのままでいい”ということ。多くの有権者はそのことすら、まともに考えていないようです。

私の同世代の知人はつぶやきました。「自民党以外に、投票するような政党もないしなあ」。民主党政権のかつての失敗に過剰反応し、健全な二大政党による政権交代への道を閉ざすような発言です。

戦前から食糧不足であった日本

いまも日本は食糧の自給率で、先進国のなかでは最低水準(38%)に留まっています。アメリカは132%、ドイツですら86%、イタリア60%です。政治の無為無策を感じてしまうのは私だけでしょうか。

それでは太平洋戦争前は大丈夫だったのでしょうか? とんでもありません。いまは米の生産だけは自給自足できる状況ですが、当時はその米すら不足していて、毎年、ビルマから300万トン、タイから200万トン、仏印から150万トン、計650万トン輸入していました。国内の米の生産量は900万トン足らずですから、その7割も輸入米に頼っていました。主食ですらこのありさまです。

日本が満州に目を付けたのは、この食料確保と石炭・鉄鉱石を狙ってのことなのはいうまでもありません。

海外依存度の大きかった主要資源

主要資源のうち、海外依存度の大きかった物はつぎの通りです(『海軍要覧』昭和14年)。

①100%:ニッケル、綿花、羊毛、ゴム

 

②92%:石油、鉛

 

③87%:鉄鉱石

 

④74%:亜鉛

 

⑤71%:錫

 

⑥68%:マンガン

 

⑦67%:希少金属

 

⑧55%:アルミニウム

奥宮正武氏はつぎのように書いています(『太平洋戦争 五つの誤算』朝日ソノラマ)。

それらに加えて、食糧も自給できなかったので、昭和十年代のわが国は、自国の力のみでは、国家の存続すら困難な状態であった。

ゼロ戦は米国のお陰で飛んでいた

さらに加えて、わが国の誇る兵器であったゼロ戦も、実態はつぎのような情けないものでした。

ゼロ戦をつくる材料と、それに使用されていたガソリンや潤滑油のほとんどは、米国を主とする外国産のものであった。

 

ゼロ戦を飛ばせるには、オクタン価92の航空機用のガソリンが必要であったが、当時のわが国では、オクタン価87のものしかつくることができなかった。

燃料を米国に止められた日本

米国は日本に対し、つぎのような燃料輸出規制を実施しました。

①昭和14年7月:石油・ガソリンの輸出制限

 

②昭和15年9月:対日ハイオクタンガソリンの輸出制限(日本軍の仏印北部進駐を受け)

 

③昭和16年8月:石油輸出全面禁止(日本軍の仏印南部進駐を受け)

それではどうやってゼロ戦を飛ばしたのか、知っている方は教えてください。私は不思議でなりません。

このような致命的な弱点(戦争する資格・条件を持っていない)にもかかわらず、日本という国・国民は、三段目にもかかわらず横綱に戦いを挑み、予定通り惨敗し、心身共に踏みにじられてしまいました。

日米の戦力比較は子どもと大人

ダメ押しついでに、野村大使に随行した岩畔豪雄(いわくろひでお)大佐(陸軍省軍務局軍事課長、昭和16年8月帰国)が報告書にのべた戦力の日米比をご紹介します。

戦力項目 日本 米国
❶製鋼能力 1 20
❷石油生産量 1 数百
❸電力 1 6
❹飛行機生産数 1 5
❺船舶保有量 1 2
❻工務労働者数 1 5

それにもかかわらず、かれら(軍指導者)は戦争に踏み切りました。奥宮正武氏はつぎのように書いています。

自国の国力をよく認識せず、それを軽視して、不備な軍備のままで「希望的観測」の下に、わが国の命運を左右する重大な決定がなされてしまった。

希望的観測が日本をダメにする

希望的観測」これがわが国エリート指導層の最大の弱点であるようです。われわれはこれの再発防止に注力しなければなりません。

大きな献金先の電力業界に甘い自民党。なんとか彼らが希望する原発の規制を緩和してやろうと援助を惜しまない。”原発の安全神話”をつくり出し、そしてついに1990年、「長時間の全電源喪失について考慮する必要はない」という「原発安全設計審査指針」を通してしまった。その結果の惨状は、福島原発で体験したとおりです。

だから私は常々思います。自民党が大切にするものは「1に米国、2に大企業、3、4がなくて、5に官僚」だと。国民は入っていないのです。それなのに国民の多くは、こんな政党に”片想い”などして。奴らがつけあがるわけです。おーバカバカしい。自分の命は自分で守りましょうよ、最低限。

教訓②希望的観測に気をつけよ