「ヒヤリ・ハット」の報告のあり方、対策のとり方について、引き続き、谷村冨男『ヒューマンエラーの分析と防止』(日科技連)を参考に考えてみましょう。
「ヒヤリ・ハット」とは、作業中に「ヒヤリ」としたり、「ハッ」とした危ない出来事をいいます。一つまちがえたら、事故やケガになっていたが、幸い何事もなくすんだ出来事です。
ヒヤリ・ハット3つの対応5S 見える化 コンサルティング
この現象は日常的に身の回りに発生していますが、対応は次の3つに分かれます。
①対策をとらない多くの組織:「危なかったなあ」、「ああよかった」、「これからは注意しよう」ですましてしまう。
②対策をとるわずかな組織:「同じまちがいを今度は起きないようにしよう」、「再発防止策を講じよう」、そこまでは大変けっこうです。
③対策を創るきわめてまれな組織:別の部署や他社で起きたヒヤリ・ハットの中から、「自部署におこるかもしれない事例を見つけ出し、先手必勝で手を打つ」という他の事例を教訓として活かす組織です。
ヒヤリ・ハットのデーターベース活用5S 見える化 コンサルティング
③の組織になるためにはまず、自社のヒヤリ・ハットのデーターベースをつくることがポイントです(事故・ケガのデーターベースをつくった上で)。ここからときどき検索して、安全対策テーマを見つけます。
また下図のように、業界別にヒヤリ・ハットのデータベースが公開されているものがありますので、これを参考にテーマを見つけることもできます。
ヒヤリ・ハットの優秀フォーマット5S 見える化 コンサルティング
ヒヤリ・ハットの報告書の設計も重要です。単なる報告に終わらないよう、行動に結びつけていくことが重要です。谷村冨男氏は、これを本人と上司の連係プレーで対策実施するようなフォーマットを提案しています(下図)。
ヒヤリ・ハットの原因として、「環境」「設備機械」「作業方法」の他に、「あなた自身」の欄を設け、自分自身の反省を促しています。とかく他のせいにしがちな傾向に歯止めをかけています。
あなた自身のせいを掘り下げる5S 見える化 コンサルティング
「あなた自身」のせいの場合、それをさらに以下の12の心理的・身体的傾向に分類しているところに特徴があります。
①よく見えなかった よく聞こえなかった
②気がつかなかった
③忘れていた
④知らなかった
⑤深く考えなかった
⑥大丈夫だと思った
⑦あわてていた
⑧不愉快なことがあった
⑨疲れていた
⑩無意識に手が動いた
⑪やりにくかった(むずかしかった)
⑫身体のバランスをくずした
ヒヤリ・ハットの組織プレー5S 見える化 コンサルティング
以上の該当項目に〇をつけて、「わたしはこうしたい」の実践に結びつけ、それに対して「上司の助言」をいただきます。
「環境」「設備機械」「作業方法」については、上司に対して「こうしてほしい」欄にかきこみ、これも「上司の助言」をいただきます。
このようなフォーマットを活用して、本人と上司が連携して対策を講じ、さらにデータベースを活用して対策を創っていけば、安全対策は最高レベルといってよいでしょう。事故・ケガを芽のうちに、自然につんでいくことになります。