いちご大福が生まれたきっかけ5S 見える化 コンサルティング
「いちご大福」は、大福のあんこの中に、新鮮な生のいちご一粒がまるごとおさまっています。加工されないままの果実が、和菓子にとり入れられた例はほとんどありません。
大角和平さん(当時33歳、新宿区の和菓子屋「玉屋」の3代目)が、1985年2月に売り出していらい、日本全国に広まりました。
今ではすっかり定着し、和菓子の定番になりました。大角さんの言葉です。
いちごのショートケーキがよく売れるのを見て、和菓子にもと思いたったんです。
最初の日、おそるおそる20個だけつくったら、30分で売り切れてしまって・・・
新商品開発の3つの条件5S 見える化 コンサルティング
要素の組み合わせが新鮮だった成功事例です。それを実現するには、次の3つの条件が必要不可欠なようです。
①若いということ(先入観や固定観念に毒されていない)
②失敗を恐れず、とにかくやってみる(失うものはまだ少ない)
③名声が確立した老舗ではないこと
これが老舗となると、後継者にはこんな冒険は許されず、ひたすら伝統を守りぬくことに精一杯になりがちです。
「やってみなはれ」の鳥井信治郞にしても、サントリーの創業者だから言えた言葉です。3代目くらいまでは、まだ老舗にはなりきっていないのでしょう。
新製品開発の3つの条件5S 見える化 コンサルティング
これを企業の新製品開発に当てはめてみましょう。
①若手(とりわけ不良社員やスネ者)を抜擢すること
②失敗を恐れず、どんどんやってみること
③老舗意識や伝統にしばられないこと
すでにご紹介したソニーの画期的プロジェクトチームの成功事例のように、「一流マネジャー+不良社員たち」にはできても、「三流マネジャー+良い子たち」にはできないということです。
高学歴の秀才(良い子)たちをいくらかき集めても、よい新製品開発はできないという事実に、企業経営者はそろそろ気づいてもよいと思うのですが。
稲盛和夫氏を研究開発の場から追い出した、松風工業のような失敗を踏襲してはいけません。経営者の器が小さいから、「歴史的な大魚」に逃げられてしまうのです。
知識はあっても開発には結びつかない5S 見える化 コンサルティング
戦後、西洋菓子の侵入で和菓子の売れ行きがばったり落ちてしまったとき、日本和菓子協会は、研修会で次のような新製品開発のヒントを提示しました。
①和菓子と、異質とみなされる洋菓子を結合する
②和菓子と、お菓子でない食品を結合する
③お菓子と敵対関係にあるお酒を結合する
いちご大福は、②の「お菓子でない食品を結合する」に相当しますが、1985年に大角さんが発明するまでは、だれもそれを実行しなかったわけです。
不思議です。着眼点、方向性は正しい。知識・あるべき姿としては頭の片隅にある。ただそれが、具体性をもった商品として、立ち上がってこないのです。
見える化によるブレイク・スルー5S 見える化 コンサルティング
新製品開発の苦しさ、面白さは、まさにここにあります。誰かがブレーク・スルーして見せてくれるのを、多くの人が待っています。
いちご大福を見せられたから、初めて「ああそうなんだ」「そんなのってありなんだね」とみなの肚に落ちたのです。
その他の具体例を一つご紹介しましょう。フェラーリのデザイナーだった奥山清行氏の以下の言葉です(くわしくは『フェラーリと鉄瓶』(PHP文庫)参照)。
見える化することの魅力、人を動かす力の偉大さを、味わっていただきたいと思います。