Case study㉘ 宅急便ウォークスルー車 Walk-through vehicle

小倉昌男5S 見える化 コンサルティング

私の尊敬する経営者は4人、そのうちの一人が小倉昌男氏(1924-2005)です(残り3人は、土光敏夫、大野耐一、稲盛和夫)。

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宅急便専用ウォークスルー車の開発5S 見える化 コンサルティング

小倉氏の著作『経営学』(日経BP社)は、ビジネス書の名書です。その中から宅急便専用集配車の開発の経緯にふれた箇所(P.220~221)から引用し、今回の事例研究とします。以下の文を読み、以下の課題について考えてみましょう。

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①宅急便専用の集配車の開発は、それまで取引のあったメーカーに相談したのであるが、どの会社からもはかばかしい返事をもらうことができなかった。

 

②困っていたところ、それまで全然取引のなかったトヨタ自動車が相談に乗り、開発してくれることになった。

 

③ヤマト運輸の社員がベニヤ板で模型をつくり、意図するところをよく説明して図面を引いてもらい、試作車を作って手直ししながら特注車を完成させていった。

 

④トヨタ自動車には大変苦労をかけたので、その後ウォークスルー車は独占的に納入してもらうことにしたのである。

 

⑤完成車を見た他のメーカーは、異口同音にこんな車ならうちでもできると言ってきたが、後の祭りであった。

課題5S 見える化 コンサルティング

◇課題1:それまでに取引のあった自動車メーカーはなぜ、宅急便専用集配車の開発に協力してくれなかったのでしょうか?

 

ヤマト運輸が、将来的にこれほどまでに成長するということを、誰も予測できなかったから本気になれなかった、という理由もあるでしょうが、その他の理由も探してみてください。

 

◇課題2:取引先とはある程度時間がたつと、癒着したり、緊張感が薄れがちになります。これを打破し、よい緊張感を保つために、つねにもっとよい取引先を探すことが必要です。
あなたの会社は、そのこと(優良取引先の発掘)をシクミとして実行していますか?

 

◇課題3:ベニヤ板で模型をつくり、意図するところをよく説明したヤマト運輸の行動は、相手(トヨタ自動車)を本気にさせたと思います。
あなたの会社では、新製品開発や新規取引先に対して、そのような努力を払っていますか?

 

◇課題4:トヨタ自動車のような大会社が、このやっかいな新製品開発に乗り出し成功させたのは、なぜだと思いますか? 両社トップ同士のコミュニケーションがあったにせよです。

 

◇課題5:「こんな車ならうちでもできる」と言って、既存の取引先はほぞをかんだわけです。それならなぜ、先んじて「こんな車というイメージをつくる」努力を、既存メーカーはサボったのでしょうか?

反骨の闘士・小倉昌男5S 見える化 コンサルティング

結局既存メーカーは、小倉昌男という傑出した人物の本性を見抜けなかったと思います。

小倉昌男は、最も大事な取引先であった三越を切り捨てました。悪名高い三越社長岡田茂が、無理難題を取引先に押しつけてきたとき、小倉昌男はこれを敢然としてはねのけ、取引を断ったのです。そんなことふつうできますか?

その後も許認可を巡り、運輸省と壮絶な戦いをくり広げ、宅急便ビジネスを大成功に導きました。

そんな反骨の闘士を相手にしているという認識をもたなかった、ぬるい既得権益尊重の既存取引メーカーが完敗したというのが、このウォークスルー車事件でした。