改善事例⑫ 他人の引き出しを開けられるか? Check all desks

書類は30秒以内でさがせるか?5S 見える化 コンサルティング

ファイルされた資料は、事務所にも、生産現場にもあります。そのどちらも、捜す1枚2枚が短時間(30秒以内)で検索できなければ、5Sができているとはいいません。

逆にいうと、すぐ見たい資料は、つねに短時間で検索できるようになっていなくてはなりません。数秒間なら許せますが、数分間では許せないということです。

30秒以内というのは、30秒なら許されるというわけではなく、かぎりなく0に近い方がよい、ムダな時間は1秒でもなくしたいということなのです。なぜなら、捜している時間は、「正味の働きがない」からです。

さがす時間がつみ重なると5S 見える化 コンサルティング

こんなムダな時間が、1人だけではなく、10人、100人とつみ重なっていくと、膨大な損失につながります。次の計算例をご覧下さい。1分にかかるコストを100円としています。

10人の事務所で、毎日1人あたり30分の書類捜しをしていました。これを年間金額換算してみましょう。

 

100円/分×30分×10人×20日/月×12月=7,200千円/年

 

つまり1日30分の書類捜し時間がつもりつもって、1年間では人2人分近い年奉が飛んでしまうのです。

ここでいう「書類捜し時間」とは、「書類の出し入れに関わるすべての時間」という意味で、「①自席を立って書類を手に入れ、また自席に戻る時間」、「②自席を立ってその書類を元に戻し、また自席に戻る時間」の両方を含めています。

ですから1日30分というのは控えめな数字であることがおわかりいただけるでしょう。

書類検索の時間を計れ5S 見える化 コンサルティング

この書類出し入れに関わるすべての時間を、できるだけ少なくする活動が、事務所の5S活動の中心にきます。ですから下の写真のように、事前にランダムにサンプリングした書類を、担当者に捜させ、ストップウォッチでその時間を計ることをお勧めします。

サンプリングは「〇年〇月〇日の営業会議議事録」、「◇年◇月◇日の顧客△△のクレーム書」というように具体的に指定します。

事務所書類検索時間の短縮 マサキ経営 正木英昭 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

その結果、自分が管理しているファイルでさえ、求める1枚をまともに捜せないという事実に直面して、驚くことになります。3分捜してもでてこない場合は、「検索不能」として時間測定を打ち切ります。

その驚き、悔しさを、徹底した改善につなげるのです。そのためにはこうして人は、一度「恥をかく」必要があるのでしょう(一度ですめば上できかもしれませんが)。

共通のキャビネットを開ける5S 見える化 コンサルティング

では、あなたが5S点検の担当者になったとしましょう。あなたが訪れた職場で、「書類がスムーズに検索できている」という最も大切なポイントを、どのように確認しますか?

まずは共通の書類置場のキャビネットを開けて、なかを観察します。下の写真は、コンサルタント大先輩のH氏が、それを行っているところです。まだ駆け出しだった私は、そのような姿を見て5S点検のポイントを学んでいきました。

引き出しを開けて点検するコンサルタントH氏 マサキ経営 正木英昭 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

下の写真は、新人コンサルタントのM君が、やはり共通のキャビネットを開けて、担当者に質問しているところです。これをしなかったら5Sコンサルタントとはいえません。

共通キャビネットの引き出しを点検する  マサキ経営 正木英昭 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

こうしてコンサルタントは、担当者の目の前で事実を突きつけることによって、担当者に反省と改善行動を促すのです。

コンサルタントに指導を仰がない場合は、もちろん自分たちでやらなければなりませんが、こうして次々にキャビネットの引き出しを開けて、担当者に現実を突きつけます。

個人の机の引き出しを開ける5S 見える化 コンサルティング

ここまではよいとして、それでは個人の机の引き出しも同じように、次々に開けて担当者に現実を突きつけられますか? おそらくできないのではないでしょうか?31年のキャリアを持つ私ですら、躊躇することがあるのですから。

私が今遠慮しているのは、その事業所の長(工場長、社長)のみです。これはさすがに開けられません。皆の前で恥をかかせたくないのも理由の一つです。ですから巡回の時、近くに行ったら自分から、「先生、私の机も見てください」と声をかけていただきたいのです。そのような殊勝な人は滅多にいませんが。

ましてあなたの上司の机は開けられないのではないでしょうか? マル秘資料が入っていて、引き出しを開けるのを禁ずる場合は、「施錠」しておけば良いのです。人事考課表とか個人給与明細表などです。

でもそんなものを長々と個人デスクに入れておくものなのでしょうか? 私の経験では、そのような例外は非常に少ないという印象です。

個人の机は会社から預かった仕事スペース5S 見える化 コンサルティング

とにかく個人机とは、何を置いても許される個人の持ち物ではありません。仕事を遂行するために会社から借りた(委託された)スペースなのです。なかを整然とさせ、捜す時間のムダを省くことは業務の一環でもあります。

また緊急時、持ち主(預り主)が不在の時には、なかを開けて書類を処理しなくてはならないときがあります。このような緊急対応の意味でも、施錠したり、乱雑に書類などを放置しておくことは許されないのです。

個人机の引き出しをあなたは5S点検で開けられますか? マサキ経営 正木英昭 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

理屈はこの辺でおいて、5S巡回の時は事前に予告してもよし、次々に個人机の引き出しを開けていきましょう。そして大いに恥をかいていただき、次回は改善しておくように依頼しましょう。

そんなことを粘り強く続けることによって、ようやく事務所が「格好がつく」のです。読んでいるだけで疲れてきますね。でもそれが5Sの宿命です。粘り強く接し続け、相手が根負けして、心を開き、自ら進んでやるまでの果てしなく遠い道のりを歩むしかないのです。

最後にもう一度、「あなたは他人の机の引き出しを開けられますか?」。