5Sが始まると清掃は全員参加になる5S 見える化 コンサルティング
清掃が好きな人は少ないでしょう。できたらしないですませたい”余分な雑事”にすぎないのです。自分のすべき「仕事」の中に入っていないのがふつうです。
しかし、5Sが始まると、そうもいかなくなります。きれいな職場をつくり、維持することが、全員参加で求められます。なぜならそのような職場から、良い仕事、よい人財が生まれるとされるからです。
清掃のもつ精神的な意味(昔)5S 見える化 コンサルティング
日本の社会では、昔から清掃には精神的な意味がこめられていました。芭蕉(1644-1694)の次の一句は、それを象徴的に示しています。
庭掃きて出ばや寺に散柳(にわはきていでばやてらにちるやなぎ)
かつては、禅寺に一宿したものは、寝所や庭を掃除して出るのが礼であったのです。芭蕉は全昌寺(石川県加賀市)という寺に泊まり、若い僧たちに求められてこの句を残しました(奥の細道)。
貝原益軒(1630-1714)も『養生訓』のなかで清掃について、次のように述べています(現代語訳)。
外部の環境がきれいだと、中心もこれに接してきれいになる。外から内を養うのは理にかなっている。
だから居室はつねに塵埃をはらって、前庭も召使いに命じて、毎日きれいに掃かせるのがよい。
自分も時どき机の上の埃をはらい、庭におりて箒をもって塵をはくのがよい。
稲盛和夫氏の京都清掃5S 見える化 コンサルティング
現代でも、稲盛和夫氏は京都商工会議所会頭在任中の清掃体験について、次のように述べています。
京都は神社仏閣をはじめ、歴史的な観光資源に恵まれている。そのために、いつでも観光客が来てくれると傲慢になっていた面があったのではないか。
例えば街のあちこちによごれた所、ゴミが捨てたままになっている所があった。
そこで、まず汚れた街をきれいにしようと「門掃き運動」から取り組んだ。私も先頭に立って河原町通りから四条通り、五条通り界隈を掃いてまわった。
そのかいあって、多くの市民の理解を得て、市の美化条例の施行につながった。
ゲーセン裏庭の清掃5S 見える化 コンサルティング
私自身、ゲームセンターの5Sを指導していたとき、清掃の効果について、次のような経験があります。
ゲームセンターの裏庭に、厚くふり積り、手のつけられていなかった落ち葉だまりがあった。
ふだん客の目につかない死角ではあったが、5S運動のなかで、店長にきれいに掃除するように指摘した。
店長はまじめに掃除して、地肌が見えるようになった。
以前は店内にムカデが入りこんだこともあったというが、この状態が維持できれば、そんなこともなくなるだろう。
清掃予定表の美しいシクミ5S 見える化 コンサルティング
このように地味で好まれてはいないけれども、なんとしてでも定着させなければならない大事な清掃について、上手な工夫例をご紹介します。
次の写真は、私がかつて見たなかで、最もみごとで美しい「清掃予定表」です。検査部門の20代の5Sリーダーが率先してつくりあげました。
1カ月分の清掃スケジュールを、日々どこの区域のどの場所(「本日清掃箇所」)を、だれが(別途「清掃実施表」に明記)清掃するのかを、マグネットボードで示したものです。
月が変われば、5Sリーダーがまた日々の予定をマグネットで更新します。ただし、表の一番下に、「毎日、清掃する箇所」という欄があり、ここはその月の間毎日清掃する大事な場所を示しています。
この表を見ると、週初めの月曜は「本日清掃箇所」はほぼ3カ所に抑え、その他はほぼ4カ所というようにきめの細かい配慮がされています。
清掃箇所のプレートは、6色に色分けされていますが、それは何を意味するのかについては聞き逃しました。今にして思うと、もっとちゃんと工夫を聞いてあげる努力に欠けていたと反省しきりです。
本日清掃箇所の見える化5S 見える化 コンサルティング
この清掃予定表のすごいところはそれに止まりません。さらに、さらにダメを押すかのように、「本日清掃箇所」というプレートが、その清掃予定箇所に貼られているのです(以下の写真)。
ここまでいけば、どんなにうっかりしたあわて者でも、忘れようがありません。清掃が終わらなければ、そのままプレートが貼ったままになり、翌朝誰の目にもついてしまうからです。
多くの人が嫌がる、めんどくさがる清掃をこのような美しいシクミで定着レベルまでもっていったこの5Sリーダーの人生に、幸あれと願ってしまいます。