品質管理② 雪印の失敗を他人事にした?

雪印乳業の食中毒事件5S 見える化 コンサルティング

前項でご紹介したように、雪印乳業は2000年6月に大阪で、戦後最大の集団食中毒事件を起こし、7月にかけて近畿地方を中心に14,780人もの認定患者を出すに至りました。

当初は大阪工場のバルブ洗浄のまずさなど設備保全不備が疑われましたが、結局真の原因は大樹工場の汚染粉乳と判明し、長期間にわたって雪印バッシングがマスコミを賑わせました。後に大阪工場は廃止されました。

新たな小雪印事件発生5S 見える化 コンサルティング

その騒ぎがまだ覚めやらぬ10カ月後翌2001年4月25日、今度は金沢市のJ乳業が以下のような規模は小さいけれども食中毒事件を起こしました。これを反面教師のケーススタディとして学びましょう。

不適切な判断が廃業を招いた 品質管理 正木英昭 マサキ経営 5Sコンサルティング 見える化コンサルティング

①まず2001年4月25日に、紙パック入りの牛乳に異臭がするというクレームが発生し、会社は210本をスーパーから回収しました。

 

②社員が回収した牛乳の5~6本を試飲検査して、異常がないと判断しました。

まともな食品業界の異臭対策の流れ5S 見える化 コンサルティング

結局、顧客の異臭という官能に対して、社員の試飲という官能で対応したのです。まともな食品業界の人ならすぐに、次の流れが浮かび、迅速に対処することでしょう(当時の雪印乳業も、まともではなかったことになります)。

異臭→細菌検査・異物混入検査→関係者への報告・公表→全面回収・廃棄→原因究明

異臭などという官能検査だけではなく、ここは必ず細菌検査異物混入検査をすべき場面でした。J乳業にその検査ができなかったとは思われませんので、事なかれ主義が蔓延していたとしいか言い様がありません。

感度のよい経営者は、検査結果が出る前に回収を急ぎ、顧客の安全を守ることを重視するかもしれません。食品業界は特に、人の命と健康という社会的重責を担っていることを、片時も忘れてはなりません。経営理念にもちゃんとうたっているはずです。

犯罪行為に足を踏み入れた5S 見える化 コンサルティング

悪質なのはそれからです。もう犯罪行為と言ってもよいでしょう。

③異常がないと社員が判断した回収牛乳を、翌4月26日に学校給食用牛乳に混ぜて再利用しました。

 

④翌4月27日これを飲まされた金沢市の児童生徒ら385名が、腹痛吐き気を催し、食中毒事件が発覚しました。

これまでも”問題製品”を混ぜて薄めて再利用してきたのではないか、そのような手口が常態化していたのではないかと疑わせるようなやり口です。

自主廃業まで追いつめられた5S 見える化 コンサルティング

⑤J社は、食品衛生法違反、業務上過失傷害の疑いで捜査され、 無期限の営業禁止処分を受けました。

 

⑥J社の社長は再建を諦め、自主廃業しました。

「無期限営業禁止」という厳しい処分は、当時社会的な問題になっていた雪印乳業大食中毒事件が背景にあったと思います。

異物混入も食品業界の大きなリスク

この食中毒事件の真犯人は、雪印乳業のような黄色ブドウ状球菌ではなく、洗浄剤の混入が有力視されています。

大手寿司チェーンKのある店でも、寿司を握る手水(ちょうず)に逆性石鹸を混入させるという食中毒事件を発生させました。

これらの食中毒事件の多くは、5Sの徹底で防げると、私は信じています。少なくてもそのリスクを大幅に減少しうると。ですから、食品関連業界では5Sを選択しない選択肢などありえないと私は思います。顧客への品質保証のためにも。

品質保証体制の構築が急がれる5S 見える化 コンサルティング

品質保証体制の構築を下図で示しました。「お客様に保証できる製品作り」のために、以下のような情報をたえずインプットし続けることが必須条件であることがおわかりいただけると思います。

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①お客様の要望

②社会的ニーズ・法規制

③市場動向・技術動向

④品質に関する情報(クレーム・コンプレインを含む)

J乳業も、まだ余韻が残る、規模はちがうとはいえ同業者である雪印乳業の中毒事件の教訓を真摯に受け止め、社長が率先して工場の5Sや管理体制を引き締めていたら、廃業までの事態は避けられたのではないかと思ってしまいます。