品質管理⑤ パレート図を活用しよう Pareto’s law

パレートの法則とは5S 見える化 コンサルティング

QC8つ道具の一つに、パレート図という便利な手法があります。これはイタリアのパレート(V.F.D.Pareto,1848-1923)が唱えた経験則から生まれた手法です。その経験則とは、以下のようなものです。

イタリアの富の80%は、20%の人口によって生み出されている、ということをパレートが発見し、他国にも同じような分布が見られたことから提唱しました。

 

つまり、おおよそ経済効果の80%は、それを生み出す上位20%から生まれるというもので、「80:20の法則」とも呼ばれています。

 

この法則の当てはまる観察事例として、「売上の80%は、上位20%の顧客から発生する」、「売上の80%は、上位20%の商品から生まれる」などがあります。

 

したがって、企業活動において、収益最大化を前提とすると、すべての要因にまんべんなく対応するのではなく、「80%の効果を生む上位20%の要因に資源を投入するほうが、高い効果が見こまれる」、というところにポイントがあります。

パレートの法則の品質不良対策への応用5S 見える化 コンサルティング

パレートの法則を、品質不良問題に応用すると、「ある製品の不良の80%は、20%の現象によって占められる」ということができるかもしれません(仮説)。以下のパレート図によってそれを見ていきましょう(『第2版 QC入門講座5 データのまとめ方と活用Ⅰ』日本規格協会参照)。

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上図は、同じ製品を同数加工するときの不良の発生数を、改善前(左側、n=171個)と改善後(右側、n=108個)を比較したものです。ここにパレートの法則を応用しています。

改善前の不良現象の種類とその数は、以下の表のようになりました。

不良現象 不良個数 累積数 データ数百分率% 累積数百分率%
バリ 73 73 42.7 42.7
シルバー 43 116 25.1 67.8
ヒケ 17 133 9.9 77.8
寸法不良 12 145 7.0 84.8
ウェルドライン 151 3.5 88.3
その他 20 171 11.7 100.0
合計 171 99.9

上図左の棒グラフは、現象別に不良数の多い順に並べたものです(ただし「その他」は最後にします)。同じく折れ線グラフは、上表の累積数百分率を結んだものです。

約7割を占める上位2つに対策を打つ5S 見える化 コンサルティング

ここでは、不良数の累積数百分率67.8%(約7割)を占める、上位2つの不良現象「バリ」と「シルバー」について対策を打つことにしました。

その結果、改善後の不良数は108個となり、改善前より63個、36.8%の減少となりました。対策を打ったバリは、1位から3位に後退し、同じくシルバーは、へったものの1位となりました。対策を打たなかったものは、そのまま変わりません。

今後さらに対策を打っていくとすると、1位のシルバーと、2位のヒケが対象となるでしょう。

このようにして、不良の上位2~3の現象に対策を打っていくことによって、効率よく全体の不良を削減することができます。このときパレート図を活用します。

生産サイクルタイム短縮への応用5S 見える化 コンサルティング

以下の事例は、ある橋梁・鉄骨工場にて、生産サイクルタイムを削減したときのものを、パレート図で示したものです。

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改善前(上図左側)は、サイクルタイムは134分かかっていました。その内訳は、段取時間が65%も占めていました。

1位の時間短縮のみで全体は半減5S 見える化 コンサルティング

そこで段取時間を徹底的に改善した結果を、右側に示します。全体では、段取時間は61分になり、短縮時間は73分、短縮率は54%です。段取時間は、サイクルタイム全体の最下位(4位)に短縮されました。

このように上位で占める割合が多い項目は、それだけを集中的に対策をとるだけで、半減するような効果を効率よくえられることがあります。

改善前と改善後のパレート図を並べるだけで、改善効果、その分析内容も手にとるようにわかり、発表効果も大きいものがあります。ぜひ活用したい手法です。