検査についてのブログで、「検査はすべて全数検査で行い、無検査で工程が受け入れる方式」が理想で、トヨタはそれを実行しているということを書きました。
抜取検査は次善の策5S 見える化 コンサルティング
ですから、抜取検査は、確率的に不良が含まれる、できるだけさけたい次善の策だということも申し上げました。それを大前提にして、抜取検査のことも考えてみましょう。抜取検査は以下のような場合に行われます。
供給先の格付・選択に活用する2回抜取検査5S 見える化 コンサルティング
ここでは上記「④ロットごとの品質が変動する供給者を格付・選択したいとき」使われる「2回抜取検査」についてご説明します。
2回抜取検査とは、以下のように行われます。例をもってご説明します。
2回抜取検査の手順
①1回目のサンプル50個を抜取検査する(ロット500個)。
②そのとき不良数が0なら、ロットを合格とする。
③もし不良数が3個以上あれば、ロットは不合格とする。
④不良数が1~2個の場合は、2回目のサンプル50個を抜取検査する。
④1回目と合わせて100個のうち不良数が3個以下ならロット合格とする。
⑤1回目と合わせて100個のうち不良数が4個以上ならロット不合格とする。
この説明の前提条件は、以下のようなものです。
AQL1.5%、ロットの大きさ500、検査水準Ⅱ、なみ検査、2回抜取形式における抜取検査方式
AQL= Acceptable Quality Level:合格品質水準
検査の厳しさの切り替えルール5S 見える化 コンサルティング
個々のロットの判定は以上のように行われますが、連続して取引のある供給先とは、その成績の良否によって、以下のように検査の厳しさを切り替えていきます。
切り替えルールの手順5S 見える化 コンサルティング
以上の例についてご説明します。
①最初はなみ検査で行い、もし連続5ロット中2ロットが不合格になった場合は、きつい検査に移行します。
②きつい検査に移行してから、連続5ロット合格したら、なみ検査に戻れます。
③きつい検査に移行してから、不合格ロットの累計が5ロットになったら、検査(取引)を中止し、供給者から是正処置と効果確認の報告を受け、それをもとに取引を再開するか、再開するかを判断します。
④またなみ試験を続けているうちに、切り替えスコア(下記)が30以上になり、なおかつ、供給者の生産が安定していて、責任者が認定した場合、ゆるい試験に移行できます。
⑤ゆるい試験に移行した後、次のようなことのどれかがが起こったら、なみ試験に戻します。
❶1ロットが不合格
❷生産が不規則であったり停滞しているとき
❸なみ検査に復帰する必要が生じたとき
切り替えスコア5S 見える化 コンサルティング
切り替えスコアとは、2回抜取検査の第1サンプルのロットの合否について、次のようなルールを設けます。
①1つのロット合格で、スコアを+3ずつふやしていく。
連続10ロット合格したら、ゆるい検査に移行する資格ができる。
②1つのロット不合格で、切り替えスコア全体を0に戻す。
つまり連続して、第1サンプル合格でコツコツと+3づつつみ上げていっても、不合格を起こした瞬間に0となり、ふり出しに戻るという厳しい方式です。
いいかげんな抜取検査を卒業しよう5S 見える化 コンサルティング
今回なぜ抜取検査についてふれたかといいますと、私が見た限りでは、2回抜取検査をやっている工場など見たこともないどころか、”抜取検査もどき”が横行しているからです。つまり次のようなやり方に不満を感じるからです。
①サンプリングの大きさ(数)の決め方がいいかげん
いくつのロットなら、いくつのサンプルをとるのかを統計的に考慮していない。
100個のロットなら2個とか3個とか、単に恣意的に決めている。
②サンプリングの抜取位置がいいかげん。
とりやすい場所からとる。そこには供給先がよいものだけをわざと置いているかもしれない。
③検査の成績の良否を、検査の厳しさに反映していない。
よい供給先も悪い供給先もいっしょくたにしているので、よい供給先を優遇せず、悪い供給先を甘やかす結果になっている。
主抜取表5S 見える化 コンサルティング
なお、2回抜取方式のサンプルの大きさと合格品質水準の関係については、なみ検査、きつい検査、ゆるい検査について、それぞれ「主抜取表」で決められています。この項の詳しい説明は以下をご参照ください。
『第2版 QC入門講座10 サンプリングと抜取検査』(日本規格協会)