トヨタ生産方式⑲ 柔の張富士夫 CHOU,Fujio

もう1人の雄、張富士夫
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前回に引き続き、『生きる哲学 トヨタ生産方式』から引用します。今回はトヨタ生産調査室の2人の雄、鈴村喜久男(前回のブログ参照)と張富士夫のうち、張を取り上げます。

張富士夫 写真 に対する画像結果

張富士夫(1937- 元トヨタ自動車社長・会長)は、トヨタ生産方式を進化・拡充する任務にあって、剛の鈴村に対して、「柔の張」として、人に接する態度が対照的な方法をとったことです。

工場建て直しに体を張る
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その張の人柄がよく出ているのが、岩月伸郎とともに行った、トヨタ傘下J社の主力工場の経営立て直しです。岩月は述懐します。

「岩月君、これは大変だな。とても再建のための改善活動を始められるような状況じゃあない。彼らは、我々を追い出そう、尻尾をまいて帰らせようとしている。だから、何もしなくていいけど、とにかく会社には毎日行こう。ニコニコして現場を歩きながら、彼らと根競べをして、我々が絶対に諦めない、帰らないことを思い知らせよう」

 

「夜ここにそっと呼んでみようよ。駄菓子でもつまみながら話し合えば、何かのきっかけが掴めるかもしれない」

 

こうして、現場の各位各層の人たちが、3人、5人と宿を訪れるようになり、このままではいけない、自分たちの努力で会社を生き延びさせなければ、という機運が生まれていったのです。

その張も、日本電装のトヨタ生産方式の導入指導には、手を焼きました。

指導に頭を悩ませた張さんは、そのストレスのためからか、十二指腸潰瘍で倒れ、会社を2ヶ月間休んだほどでした

優しい人柄
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張の優しい人柄をしのばせるエピソードをご紹介します。

「あの温厚な張さんが、怒りで顔を赤くしながら私(岩月)のところにやってきました」

 

その経緯は次のようなものでした。

 

「自販機が壊れたままほったらかしてあるんだ」

 

「あいつら(管理部隊)、現場で汗水垂らして働いている人たちの気持ちが全然わかっとらん」

 

「いったい、何で給料をもらっているか、わかっているのか。今から怒鳴り込んで来る」

 

現場で働く人たちにとって、“一杯のコーヒー”は、どんなに貴重で価値があることだろう。

 

私の心に、ショックと感動がない交ぜになり、押し寄せてきました。

 

やはり張さんという。人はすごい。そう改めて感じた瞬間でした。

このように地道にコツコツと、体を張ってがんばる裏方さんが、社長にもなれる会社というのは、最も官僚的でない、民主的な組織風土が健在だというの証(あかし)だとも言えます。